※室内を 20℃ 50%にしたい場合は?
今回真面目な話しなので少し長くなります。ご了承ください。
先日オーナー様から冬季の室内の湿度とか加湿器とかに関するご質問いただいたので、こちらで紹介。
アルトホームの場合ということで、全熱交換式の第一種換気システムなどの話は出てきません。
結論だけ知りたい方は、「具体的にどうすると良さそうか」だけ読んでもらえればと思います。
盛岡市の冬季間の加湿
冬季の湿度とか湿気とと加湿いうことで、30 坪くらいの家で 4 人家族、12月~ 3月までの盛岡での 4 ヶ月間という設定で計算してみます。
まずは交換される気積の計算
30 坪の家なので、床面積は 100m2 くらい。
( 30坪 × 3.3124 = 99.374m2 )
天井高を 2.4m で設定すると、気積は 240m3 くらい。
( 100m2 × 2.4m = 240m3 )
※厳密には収納や階段部分あるのでもう少し細かい計算になるのですが、はしょります。
24 時間換気で 1 時間に気積の半分が交換されるとして、1時間 120m3 気積交換
( 240m3 × 0.5回/h = 120m3 )
次に容積絶対湿度の計算
盛岡の 12 月~ 3 月の平均気温と平均相対湿度。
データは気象庁の過去の平均値から、気温と相対湿度を引っ張ってきました。
気象庁|過去の気象データ検索
- 平均気温(℃)0.9
- 平均相対湿度(%)71.5
容積絶対湿度の計算式
VH=(飽和水蒸気量)*(相対湿度)
=(217*e/(t+273.15))*(RH/100)
=217*(6.1078*10^(7.5*t/(t+237.3)))/(t+273.15)*RH/100
飽和水蒸気圧eはTetens(1930)のパラメータ値によるAugust他の式を利用
容積絶対湿度 VH(g/m3)
温度 t(℃)
相対湿度 RH(%)
気圧 P(hPa)= 1013.25
この計算式から 12 月~ 3 月までの盛岡の平均容積絶対湿度 VH(g/m3) 3.7 となります。
ここで、室内を 20℃ 50%にしたい場合、容積絶対湿度 VH(g/m3) 8.7 となります。
外気との容積絶対湿度の差が 5 g/m3 となります。
ここから湿度などの計算
室内の湿度を高くする方法は、大きく分けると2つです。
- 室内の湿気を増やす
- 外に捨てる湿気を減らす
です。
まずは室内の湿気を増やす
では実際、どのくらい加湿すればよいかです。
1 時間に 120m3 ほど換気によって湿気が外に逃げていきます。
室内を 20℃ 50%にしたい。(容積絶対湿度 VH(g/m3) 3.7 )
外気は 0.9℃ 71.5%。(容積絶対湿度 VH(g/m3) 8.7 )
容積絶対湿度の差は 5g/m3 。
24時間換気をバッチリ行うと仮定する。
1時間あたりの換気 × 容積絶対湿度差 × 24時間 ≒ 湿気ロス
となりますので
120m3 × 5g/m3 × 24 = 14.4L
1日に必要な加湿量は「 14.4L 」となるわけです。
では「 14.4L 」全て加湿器で加湿するのかという話です。
その前に、加湿器以外でどのくらい加湿されるのかのお話しをします。
(条件により大きく変わる計算上の数字です。)
ちなみに加湿器買ったりとかしない感じの、なるべくお金かからない方法です。
生活で排出される加湿:9.4L
室内では、生活していれば結構な量の水蒸気が発生します。
人体からの呼吸や皮膚からの蒸発、キッチンや洗面化粧台や浴室から自然にでる湿気などです。
本(『最高の断熱・エコハウスをつくる方法 令和の大改訂版』)によると、4 人家族で 1日 9.4L(換算すると、0.4 L/h)にもなるそうです。
部屋干しでの加湿:3L
洗濯物の水分は、乾燥重量の 0.5 倍程度と計算すると、一般的に1日1人あたりの洗濯物の量は 1.5kg ですので、 4 人で計算しますと 3L( 1.5 × 4 × 0.5 = 3 )ほど加湿されます。
浴槽の残り湯からの加湿:5L
冬に室内が 20℃ で浴槽のお湯を貯めておき、お風呂場の扉を開けておくと、24 時間で 5L くらいの加湿となります。
合計加湿量:17.4L
普通に住む + 室内干し + 風呂の蓋とドア開放
合計:17.4L
という事で、24時間換気をしっかり稼働させた際の計算では
14.4L - 17.4L = -3L
となり、3L余分に加湿できる感じになります。
(室内を 20℃ 50% にしたい場合(外気は 0.9℃ 71.5% )での計算の場合。)
外に捨てる湿気を減らす
換気を絞る方法です。
30坪( 100m2 )の住宅の換気風量が 120 m3/h という例を出しましたが、これは換気回数 0.5 回/hの計算で、0.3 回/hなら 72m3/h で良いことになります。
換気回数を絞り、0.3 回/hで 72m3/h とした場合、
1時間あたりの換気×湿度差×24時間≒湿気ロス
となりますので
72 m3 × 5 g/m3 × 24 = 8.64L
1日に必要な加湿量は「 8.64L 」となります。
すると計算上は
生活で排出される加湿:9.4L
で足りる計算となります。
ちなみに、0.5 回/hを 0.3 回/hに落とせれば、換気分の熱損失が 4 割カットとなり、Q値で実質 0.16 ほどの改善効果も期待できます。
法律上は換気回数 0.5 回/h以上の換気設備を設置する義務があります。
(もちろん、お引渡しした住宅は換気回数 0.5 回/h以上です。)
それをふまえ、0.3 回/hでの風量で運用する方法です。
換気を絞るという方法はあまり普及しておりませんが、本(『本音のエコハウス』)などを読み、検討したものです。
また、心配なのが換気不足です。
特に寝室の二酸化炭素濃度だけは気をつけてほしいです。
具体的にどうすると良さそうか
盛岡での冬季間の加湿と考えると、このような方法が良いかと思います。
- 夜間に洗濯を干し、就寝時の湿度を保つ。
- 風呂を換気扇で乾かさずに、風呂フタとドアを全開。
(できれば3時間タイマーとかで、サーキュレータで浴室側に風を送る。) - 換気量を落とす。
- 観葉植物を置く(おまけ)。
湿度をうまく管理・コントロールすると、風邪やインフルエンザの予防にもなりますので、気にかけてみてください。
ちなみにココで紹介している方法は、高断熱住宅であることは前提として、なるべく加湿器に頼らずに乾燥を防ぐ方法です。
古い家屋やアパートなどにお住まいの方むけではございませんのでご了承ください。
追伸
アルトホームでは30坪サイズのお家多くないので、換気量は上記より少ないです。
つまり加湿量も少なくてすみます。
そのぶんコンパクトなので、二酸化炭素濃度にはお気をつけください。
ただ、二酸化炭素濃度計はあまり安くありません。(ちゃんとしたのだと1万円弱くらい。)
五感と併せて必要な方はご利用くださいということです。
ちなみにボクもほしいとは思っていますが、踏ん切りがついておりません。
トホホ…